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コーナーキックでキッカーを見ている審判は街中のロケでは使えない

お~い、どこ見てんだ!通行人見切れとるぞ!

とまあ、街中での撮影の時、こんな怒号があがって人止め役のスタッフが怒られたりすることがあります。
見切れるって業界用語なんですね。字の感じからいくと、外へはみ出す、というニュアンスですが、撮影現場では画面のなかに余分なモノやヒトが入り込んでくることをいいます。
ですから街中の撮影では時に人止め役が必要です。映っている範囲の隅にスタッフが立ち、ふらふら~と知らずに入り込んでくる通行人に「すんませ~ん、撮影中なんであちらにお回りくださーい」という役目の人が。

人止め10年とかいう専門職は特になく、臨時にアルバイト雇ったり、あまり撮影に慣れていない人が借り出されたりもします。
となると大変です。
なんだかわけの分からない現場に連れて来られて、「人止めよろしく」と言われて、スタッフや機材のある場所からうんと離れたところに連れられ、「もっと上(かみ)~もっと下(しも)~」とか叫ばれて、上下(かみしも)てどっちが右?左?とあたふたして、そんでもって、通りすがりのおっさんおばさんからなに撮ってんの誰が来てるのとかしつこく聞かれて、むにゃむにゃ曖昧に答えると、邪魔なんだよ、と捨て台詞ぶつけられる矢面に立つわけですから。
カメラが回ってるのか回ってないのかの唯一の手がかりは、カメラ横のスタッフがトンボ採るみたいに人差し指伸ばした腕をぐるぐる回す姿だけだけど、そんな合図さえない現場もあって、ま、孤独な役目なんです。


いろいろな万全の態勢をとったとしても「お~い、どこ見てんだ!通行人見切れとるぞ!」の怒号があがるのはなぜなんでしょう。


ヒントはサッカーの審判とシークレットポリス(SP)にありました。

サッカーのフリーキックコーナーキックの時、審判はどこを見ているか。
記者会見や街頭演説の時、VIPを警護するSPはどこを見ているか。


審判はキッカーではなく、ボールが飛んでくる密集地帯に目を凝らし、ファールがないか見張っています。
SPは警護する人ではなく、不審者が近寄ってこないか周囲に目を光らせています。
そうなんです、ボールとか警護対象者(マルタイ)だけを見ていちゃダメなんです。ボール見てたら密集地帯でフォールがあっても気付かない。マルタイ見てたら近づく不審者に気付かない。
それと同じに、人止め役は、撮影現場見てたら見切れてくる通行人に気付かない。
どんな撮影しているか、見たい気持ちはわかります。ま、でもそこは押さえて押さえて自分に課せられた使命を今一度認識しましょう。

NGは撮影現場で起きてるんじゃない。見切れで起きてるんだ!


大勢が注目しているコトガラにあえて目を背け、その周辺に目を光らせる訓練はどこだってできます。

プロ野球中継やボクシング中継を見ていると、ときおり試合内容よりもバックネット裏やリングサイドの客が気になることがあります。
いかにもワケあり風な年齢違いすぎるカップルや鋭い眼光の持ち主がデンと座っている姿を目にして、おそらく彼らは勝敗とは別の関心で観戦してんだろうなと、その後の成り行きが気になります。
企業の撮影に行き、朝礼風景を撮影する時、発言者よりも聞いている社員の表情に注意がいってしまうことがあります。
一人か二人、くっだらねえ挨拶また始まったぜ的な顔している社員がいたりして、一枚岩ではない真実が垣間見え、組織って大変だなと同情したりもします。


事件は注目の場で起きてるんじゃない。周辺で起きてるんだ! 

 

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