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ゼロ・グラビティにゼロはいらない~あまちゃんとの強引な関係

映画館で3Dメガネかけてタイトルが出てくるまで、ずーと「ゼロ」ありが原題だと思っていました。
なのにスクリーンのタイトルには「ZERO」がなかった。
そうか、原題は「GRAVITY(重力)」なのか。

重力か無重力か、このタイトルの違いはおおきいぞーと身構えながら観てしまった90分。
 

 

 


まあスゴイ、距離感と浮遊感と安心感と絶望感と孤独感と、そして死生観の見事な映像化に圧倒です。

「感」ばかり続けて言葉遊びかよって。
いえいえこの映画は「感」を味わう映画なんです。どんなに文章を綴っても「感」は伝えられません。
じゃあ、ってレンタル?Hulu?でもいいやって。
いかんあかん。
この映画にテレビフレームや部屋の余白は不要!暗闇のみが必要なんです。映画観で味わう映画なんです。(味わったのは3Dなんですが、IMAXではなかったため少し後悔)

それにしても物語としてはこれ以上ないシンプルさ。
サンドラ・ブロックジョージ・クルーニーの間には、ストーリーをややこしくする複雑な関係・感情もなく、物語はただひたすら一点に向かって突き進んでいくだけ。


一点、それは「帰る」。
ただそれだけ。
これはもう物語の定番ですね。
今いる場所からどこかへ「行って」そしてなんだかんだあって「(生きて)帰ってくる」


この定番ストーリーを宇宙という空間で、圧倒的な映像技術に基づいて描くとこんなに新しい映画となってしまうんだと、まだまだ埋もれた可能性の深さにガツン!とやられてしまいました。

90分という手頃な時間のほとんどが邦題でいう「ゼロ・グラビティ(無重力空間)」の世界での出来事で、設定だけを見るとそれはそれで正しいタイトルなのかとも思ってしまいますが、やはり原題の「GARAVITY(重力)」について考えなければいけません。



ちょうどこの映画を観る数週間前、愛知県は豊田市美術館で開かれていた「反重力展」というのを観てきました。

反重力とは、重力に抗する仮説の力とのことで、リーフレットには地上の価値観から離れ、宇宙的視野を持つことを目指しますとかなんとか、よく分かんない説明があってクラクラしてきて、ああ、そうかこのクラクラも反重力のなせる技かも、とむりやり納得させつつ、さあ鑑賞。


展示のひとつにこんなのがありました。

「微小重力環境におけるライナスの毛布

ライナスの毛布とは、マンガ「ピーナッツ」のライナスが肌身離さず持っている毛布のことで、簡単にいえばこれを手にしていれば安心できるもののこと。

で、この展示は大地のように頼るものがない無重力空間で、人間は何によって安心感が得られるかということを実験した映像。

JAXAかなんかの協力で、数十秒間の無重力状態のなかで人間は何に触れているとと安心できるかを、クッションやらダンボールやらヒモやら風船やらで試していた。



ゼロ・グラビティ」の世界でライナスの毛布というと、宇宙船でありヒューストンとの通信であり酸素であり自分と他者をつなぎとめる命綱であったけれど、それらが失われてしまうと、途端に不安定な無重力状態に放り込まれて、不安と孤独に覆い尽くされてしまう。

私たちも日常で、サンドラ・ブロックには到底及ばないけれどいくつかの不安や孤独に襲われます。
でも、この地球にいる限りどんな時でも足元には必ず大地(地球)があって、安定しています。
この地球こそ、地球が及ぼす「重力」こそ、人類にとってのライナスの毛布なんだなと改めて気づいてしましました。


その重力さえない「ゼロ・グラビティ」のなかで、では、ライナスの毛布はなんだ?となったら、もう「希望」しかありません。
「帰る」という希望。
帰る場所があるという「希望」。

オズの魔法使い」の名セリフ「There’s no place like home!(やっぱ家が一番)」が思い出されます。 

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「トンネルの先に光がなさそうな時に、何が私たちにさらなる努力をさせるのかということを描いたストーリー」と、サンドラ・ブロックはこの映画のことを語っているそうです。


あまちゃん」の最終回で、「明日も、あさっても、来年はこっから先まで行けるんだ」と、アキとユイは、トンネルの先の明かりに向かって走って行きました。
今は見えなくともそこに光があると信じている限り諦めちゃいけない。

だってその結果、アキとユイのふたりは、20131231日に二人揃って紅白に出場し、「潮騒のメモリー」を歌い上げたのだから。
アキとユイだけでなく、春子さんもね。

 

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だから、「ゼロ・グラビティ」のタイトルに「ゼロ」は入れちゃいけないんだよ。
どうして「ゼロ」を加えたの。
ゼロがあるとないとでは、全く意味は逆で、不安定状態が主役になっちゃうでしょ、そうじゃなくて「重力」のある安定状態に向かう「希望」の物語でしょう、この映画は。
「GRAVITY(重力)」と原題どうりでなくちゃいけなかったんだよ。



で、ラストシーン。
(未見の方は要注意)
海(湖)から浮かび上がり、泳ぎ、陸地に辿りつき、口づけするように大地に頬を寄せ、砂の感触を左手で確かめる。
この地球は、重力は、やはり人類にとって安心毛布(ライナスの毛布)だと確信できた瞬間でした。

この後、サンドラ・ブロックは、弱々しいながらも二本の足で立ち上がります。
四足から二足へ。
足裏全体で大地の感触を確かめながら歩き出すその姿は、人類の誕生を見るようで感動的でした。



そうそう「GRAVITY」には、重力という意味はもちろん、重大さ、真剣さ、厳粛さ、物事の核心という意味もあるようですね。