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生前退位と3年半後の東京オリンピック・パラリンピック

最近インバウンド関連の仕事〜海外の方々に日本の魅力を紹介系〜が増えてきて、先日もタイ・インドネシアベトナムで流すCMの制作がありました。
 
そのナレーション録りのとき、読んでいただくタイ人女性ナレーターがちょっと悩んでいる様子を見せていたので、どうしたの、と尋ねました(日本語で、です)
 
 
タイ人「読みのトーンはどの程度明るく楽しげにすればいいのですか」
 
日本人「タイの方々に日本はいいところだから来てね、と伝えたいからウキウキワクワクがいいね」
 
すると、
タイ人「そうですか〜」と浮かない顔。
 
日本人「え?ウキウキワクワクじゃ、なにか問題が?」
 
 
 
その理由を聞いてスタジオにいるクライアント、代理店、通訳、制作陣、技術スタッフ全員が「ははぁ〜ん」と思わず頷き、返す言葉をしばし失くしてしまったのです。
 
 
 
 
2016年10月13日、70年もの間タイ国民に寄り添い、「お父さん」と慕われていたプミポン国王が、享年88歳で崩御されました。
 
 
崩御直後の報道を見返してみると、こんな記事がありました。
 
政府機関は一年間喪に服すとし、公務員に対しては黒いスーツなどの着用を指示。一般国民も、30日間は娯楽を自粛し、黒い服などを着るように。
 

 

 
ナレーターの彼女は日本在住なので、いまの現地の詳しい状況ははっきりとはわからないと言いながらも、友だちのFacebookのプロフィール写真には、黒塗りのものがあるといいます。
そんななか、ウキウキワクワクとした私の声を、タイ国民に届けていいものかと、彼女はためらうのです。
 
 
なるほど。気づきませんでした。
10月ニュースに触れ知ってはいたのですが、今も尚とは、思い至りませんでした。
 
 
 
 
日本は来年、平成29年を迎えます。平成になって29年目です。今年のタイのような出来事が、29年前の日本にもありました。
 
 
 
1989年、和暦でいう昭和63年がたった7日で終わった年です。翌8日から平成へと変わりました。
平成と聞いて、はじめはピンときませんでしたが、29年も経つともうすっかり馴染んでいます。
そんな中、議論されているのが生前退位。
 
 
陛下は12月に83歳になられるんですね。
8月にはテレビを通じて「2年後には平成30年を迎えます」と御言葉を述べられています。30年を節目と考えていられるのでしょうか。
それもあるのでしょうが、もしかしてもしかすると、3年半後に開かれるあのイベントのことを心配されているのでは、と思ったりもします。
 
 
 
3年半後の2020年、その年、オリンピックがやってきます。
 
 
 
1988年(昭和63年)9月の、昭和天皇の吐血から翌年1月の崩御、さらにはその後も、日本中に<自粛>というムードが押し寄せていました。
 
記憶が薄れているので、当時を記録した本(貼付の写真)を数冊改めてめくってみました。
 

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まあ、なんと、いろいろな<自粛>があったものです。
 
 
CM、コンサート、イベント、ジングルベル、企業のパーティや宴会、結婚式、優勝セールにビールかけ、ちょっとした町内会や地方のまつりなどなど、自粛や中止や延期がズラ〜と並んでいます。
突然の自粛や中止や延期で経営が行き詰まっての倒産や自殺もあったようです。
 
 
 
あれから29年。
いつかは必ず訪れるであろう次の時も、同じことが繰り返されるのかどうかは分かりません。あの時ほど極端ではないかもしれませんが、まあ、それなりのムードが漂うことでしょう。
 
 
 
「2年後には平成30年を迎えます」
このお言葉の奥にあるご心配に、応えるべきなのでは、とも思ったりします。
 
 
今回改めて昭和の終わりを調べてみて気づきました。
昭和天皇はそのとき87歳だったのですね。
 
今上天皇はまもなく83歳。4年後にはあの時の昭和天皇と変わらぬ年齢となります。
 
 
 
この3年半の間、なにもないかもしれない。でも、なにかあるかもしれない。
 
タイ人ナレーターの戸惑いに触れて、そんなことを思ったりもしたのです。
 
 
 
なにより、8月のビデオメッセージのこの御言葉は、2020年を見据えたものに思えて仕方がないのですが。
 

天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、思い殯(もがり)の行事が連日ほぼ二ヶ月に渡って続き、その後喪儀に関連する行事が、一年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。

 

 

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