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『行って帰る』場所はやっぱり地元なのか?

何名(何組)かの、いわゆる素人さんに出演していただくCMの撮影が2日間ほどありました。ある商品(サービス)があることで、地域に暮らす人たちがイキイキとつながり合っている、というもので、老若男女いろいろな職業、いろいろな立場の方々に、一言二言づつ語っていただきました。
 
こういう撮影の場合、人集めが大変です。
あらゆるコネクションを総動員し、性別年齢職業などが偏らないよう段取りしなくてはいけません。
準備期間も10日間ほどしかなく、しかも、限られた2日間の撮影日のなかで、効率的にスケジューリングする必要もあります。
 
それを見事にやってのけた女性がいました。
 
今は名古屋に住む彼女の地元は、三重県桑名市多度町
地元での交遊関係、信頼関係、地域つながりをフル動員し、町内で数シチュエーションを設定してくれたのです。
彼女がアテンドしてくれたどの現場でも、皆さん面倒な顔ひとつせず、我々クルーを笑顔で出迎えてくれました。
その様子だけで、彼女がどんな地元生活を送ってきたかが想像できます。
地元を愛しているだけでなく、地元からもきっと深く愛されていたんだろうなということがわかります。
 
しかも彼女は、今回のCMを制作するプロダクションの社員ではなく、ひょんなことから頼まれて関わってしまったという立場に過ぎなく、それなのに、ああ、それなのに、スバラシイ。
 
 
彼女は言っていました。
 
<私は多度が大好きで、ずっと、いつか自分にできる範囲で、感謝を多度に還元していきたいと思っていたのですが、最近毎日がバタバタで、そんなことを思っていたことさえ忘れかけていました。今回はその気持を改めて思い出すきっかけになり、大げさですが、生きていくエネルギーを思い出しました。>と。
 
 
 
 
 
世にある多くの物語の基本構造のひとつに、『行って帰る』というのがあります。
<ある場所・ある拠り所から旅立ち、なにかを経験し成長し、再び元の場所・拠り所に帰ってくる>という『行って帰る』構造が、複雑にアレンジを加えながら多くの映画や物語の軸となっています。
スターウォーズ」だって「千と千尋」だって「ローマの休日」だって、基本は『行って帰る』です。
 
 
どうして帰ってくるの?
「行った」ならばそのままずっと行った先にいればいいのに。
 
とはならず、
 
主人公たちの多くは、元の場所や拠り所や人のもとに帰ってくることを目指します。
すぐには帰ってこれなくとも、<帰るべきところ>への思いが心の支えとなっています。
 
 
「帰ってくる」のは、
やはりそこが居心地の良い場所だからなのか。
自分自身のアイデンティティを見いだせる場所だからなのか。
 
 
彼女の言う<感謝の還元>や<生きていくエネルギー>というコトバを聞いて、『行って帰る』構造は、単なるストーリーテリング上の技術ではなく、不変の真理から生まれたんだなと思った次第です。